「病院への”火炎瓶”投げ入れ事件をとらえて」

「病院への火炎瓶投げ込み事件をとらえて」

~常識の通用しないモンスターにどう向き合うか~

■八王子市内の病院に“火炎瓶”が投げ込まれた事件で、47歳の男が逮捕されました。犯人は形成外科に通院していて、病院の対応に度々クレームをつけていたという。

常識の通用しないモンスターにどう向き合えばいいのか。医療現場の悩みは深まるばかりである。

さて、不安な社会を反映し、いまや、「クレーマー」は日常語として定着し、「モンスター」という言い回しも違和感なく使われるようになった。「モンスターペアレント」や「モンスターペイシェント」は、その先駆けといえる。

モンスターペイシェントは、病医院に対して無理難題を突きつけたり、医療従事者に暴力を振るったりする、患者やその家族である。

彼らは、モンスターの名にふさわしく傍若無人な振る舞いをするが、その心の奥底には強烈な思い入れのあることが多い。

モンスターペイシェントには、自分や家族の健康・生命への渇望があり、それが満たされないと、些細なきっかけで怒りを爆発させる。

もうひとつ、モンスター社会の大きな原因の一つとして、サービスの問題がある。一般にサービスを受ける側は大変な恩恵を受けられるが、反対に、サービスを提供する側は時間に追われ、従来の何倍もストレスが溜まるのは当たり前の現象ともいえる。

医療機関も、昔と立場が変わってサービスが重要視されるようになった。

現代社会においては、サービスを受ける側は便利さに慣れているため、待たされることを許容できないなど、我慢の利かない人間が増えている。

サービスを提供する側がCS(患者満足)を追求すれば不満も増える。便利な世の中になるほど、不満を感じる人が増えるという図式は、現代社会の歪みといえる。

モンスターペイシェントも、普通の人も、怒りを爆発させて突発的に引き起こす凶悪事件の根本原因は同じ「社会変化に意識の変化が追いつかない」ことではないかと考えられる。

近年は誰もが予測できない凶悪事件の被害者や、モンスターの餌食になる可能性が高まっている。すなわち、犯罪者やモンスターと普通の人とを隔てるグレーゾーンが拡大

し、危険な人物の見極めが難しいハイリスク時代を迎えたのである。

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こうした社会情勢の中で、クレーム対応の担当者が置かれている状況はことのほか厳しい。なぜなら、攻撃できるのはクレーマーで、対応側は専守防衛だからである。

一般にマスコミの論調や世論は、企業や行政機関、病院、学校などの「組織」に対してアゲインストで、ひとたび問題が生じればいっせいにバッシングに走る傾向が強い。また、組織は社会性や公共性を意識している分、弱腰にならざるを得ない。

その反面、「個人」はモンスターと呼べる輩であっても、消費者、患者、生徒という「弱者」のレッテルが貼られている。

そこにインターネットやSNSの登場によって、個人は強力な情報発信の手段を手に入れ、以前とは比べものにならない圧力を組織にかけることができるようになった。

医療機関の対応が気に入らなければ、それを世界に向けて発信し、不満を持った者同士が連携できる。いわば、「腕力の強い弱者」の誕生だ。

さらに恐ろしいのは、クレーム対応を誤ると、苦情を訴えた本人からそっぽを向かれるだけでなく、一瞬にして不特定多数の人々にマイナス情報が拡大してしまうことである。インターネットという「便利で厄介なもの」により、医療機関のリスクは大幅にアップした。

「インターネットで流すぞ!」という脅し文句には相当の威圧感を感じるはずです。

「私は客(お金を払っている患者)だ!」「そんな対応じゃ納得でない!」患者満足を逆手にとって一歩も引かない構えを崩そうとはしない。

相手が理不尽だからといって「倍返し」とはいかないし、対応を誤ればインターネットで「何万倍返し」されるか分からない。

さらに相手にはあり余る時間があり、対応する側は常に業務に追われ時間がない「超ハンディキャップ戦」なのである。

しかし、クレーマーは十人十色、その目的や動機も千差万別。 そもそも、クレーマーが抱える不安や不満――心の闇――に対して完璧な対応をしようとするのは無理である。

要するに、クレームの現場は常識(正論)だけで片付くものではくマニュアルも役に立たない。

現状に100%満足している人は、まずいません。多かれ少なかれ、自分の将来について不安を感じていたり、社会や組織、人間関係に不満を抱いていたりするはずです。それが怒りや嫉妬といった負の感情と結びつくと、やがて心のタガが外れてしまう。

モンスターというと、その言葉の響きから極悪人を連想するかもしれませんが、いま日本列島を席巻しているモンスターのほとんどが、もともとは善良な一般市民なのです。私は、彼らを「ホワイトモンスター」と呼んでいます。

 これまで述べてきたモンスターの「生態」からもわかるように、巷にあふれるトラブルの多くはホワイトモンスターによって引き起こされています。

 ホワイトモンスターは、ホワイトな心を根にもちながらも、負の感情(不安)にとらわれて社会をグレーに染め上げているのです。いまや、「闇社会」の主役はホワイトモンスターなのです。

こうした状況は、今後ますます深刻化するでしょう。なぜなら、ネット環境が身近になればなるほど、「ネットモンスター」が増えたように、社会の変化に乗じた新たな“色”のモンスターが誕生するからです。

それは、対応する担当者の僅かなミスも許さない“受難の時代”の到来を意味します。

 

 

クレーム畏怖社会と広告表現の危機

クレーム畏怖社会と広告表現の危機

納得しないクレーマーの増加

最近のインターネットニュースや週刊誌の報道から、クレーム畏怖社会の到来を実感しています。「カエルのキャラクターが未成年者の飲酒を助長する」(キリンビール/缶チューハイ「本搾り」)、「つけ鼻と金髪のかつらを用いたCMは人種差別を煽っている」(全

日本空輸/羽田国際線大増便)などのクレームにより、数々のテレビCMが放映中止に追い込まれている現実。さらに、「美味しんぼ」の表現に対してのバッシングが続きます。

では、理不尽なクレームに対して企業は過剰反応しているのでしょうか?

今、誰もが、何を信じて良いのか分からないという不安な時代を生きています。些細な動機により事件が発生する現実が、人々の不安をかきたてて“不満”のガスをためています。

現代社会では、こうした普通の人と犯罪者の間の「ボーダレス化」が進んできました。いわゆる“モンスター”とよばれる人たちもボーダレス化し、一見して普通の人がモンスターに変身することも多く、体感治安が悪化しています。すなわち、誰もがモンスターの理不尽な攻撃にさらされると可能性と同じように、モンスターに変身して

しまう可能性も高まっているのです。そして、皮肉なことに、サービスを提供する側が満足を追求すれば、“満足のハードル”は高くなり、逆に不満が増えることになります。便利な世の中になればなるほど不満を感じる人が増えるという図式は、現代社会の歪みといえるでしょう。満足の期待値が上がり、その一方で怒りの「沸点」はどんどん下がってきます。待てない、満足できない、“便利で豊かな時代”は“我慢できない、やさしさの足りない時代”でもあるのです。

最近は、このような背景からでしょうか、理想・正論を語る社会派(インテリ・プライド)型の“「納得しない」クレーマー”が増えています。「こうあるべきだ!」という錦の御旗を振りかざし、あれこれクレームをつけてきます。対応する側は時間に追われ、何倍もストレスがたまってしまいます。行き過ぎた権利意識と個人主義が、“協調性や思いやり”を絶滅危惧種にしながら拡散しているのです。思い通りにならないのは「企業のせいだ、マスコミのせいだ、社会のせいだ」という“せいだ病”が蔓延して、自分のことは棚に上げ、他者に厳しい人間が増えました。彼らが厄介なのは、些細なきっかけで感情のコントロールが効かなくなり、本能のままに敵意の牙を剥きだしにし、集団で企業(獲物)を襲

うことにあります。

特に最近の苦情の傾向として、電話でのクレームが減少する一方、ネットで気軽に自己主張する傾向が拡大しています。電話は録音体制が進んだことから減少し、匿名で好きなように書き込めるネット環境は勇気も行動力もいらない。背景にあるのは間違いありません。

例えば仕事が終わった金曜日の深夜にテレビを観ながら不満をため、業務のストレスを発散するかのように、ネットを利用して気軽に「社会や企業

の“あるべき姿”を自己主張する」。企業側は顧客満足の精神からクレームを放置できず、週明け月曜から、こうしたネット上の主張に丁寧に答えていく「いたちごっこ」状態にあります。

“クレーム過多による負の連鎖”状態にあるといえます。

ホワイトモンスターの誕生

現状に100%満足している人は、まずいません。多かれ少なかれ、自分の将来について不安を感じていたり、社会や組織、人間関係に不満を抱いていたりするはずです。それが怒りや嫉妬といった負の感情と結びつくと、やがて心のタガが外れてしまうのです。

 “モンスター”という言葉の響きからブラックで凶悪な人を連想するかもしれませんが今、あちこちでみられるモンスターのほとんどが、もともとは善良な一般市民なのです。筆者は、彼らを「ホワイトモンスター」と呼んでいます。

ホワイトモンスターとはインターネットで増殖した腕力の強い「弱者(一般人)のモンスター化」。「自分は一消費者で弱者だが、企業の“あるべき姿”はこうだ」とネットで理想を振りかざす存在です。

こうした“弱者”のホワイトモンスターがインターネットという強力な武器を得て、ネット上で連携し企業側を袋叩きにする。一旦、モンスター化すれば企業をでブラック扱いし、ネットで炎上させる。メーカーに「嘘をついている」「正しい情報を出せ」と必要以上に強く要求する「ホワイトモンスター」が社会を混乱させていると感じます。

自社サイトが攻め込まれたら?

スマートフォン・携帯電話やパソコンはいまや必需品。あらゆる情報を手にできます。すぐに効率的で有利な答えを得ようと情報を集めますが、世の中に“完璧”な答えなどありません。また、インターネットで入念に事前の情報収集を行い、しっかり理論武装してから乗り込んでくるモンスターもいます。対応する側は先手を取られ、窮地に追い込まれます。「会社のホームページを細かくチェックし、重箱の隅をつつくような質問をしてくる。嫌がらせとしか思えない」と、ある企業の総務担当者は嘆いています。

従来は“難癖”的なクレーマーが多く、「ホームページで最高のおもてなしをうたっているが、接客がなっていない!」「社長のメッセージが現場に届いていない!」といった「直接型の対面クレーム」に頭を悩ませていました。

ところが今は、相手の顔が見えません。匿名のネットやSNSでの攻撃に関しては撃退しようとしない、相手の土俵に上がらないことが鉄則です。よりベストな対応は、不満の“ガス抜き”をすること。企業として親身に対応している。できうる限りのことはしていると思わせることが、真摯な企業姿勢となり消費者にも届くことになります。

「ご指摘、ありがとうございます」という姿勢で、企業も消費者も「両得の関係」を目指すのです。

最大手企業が標的になる理由

企業のイメージ戦略の中で最も重要なテレビCMが、インターネットやSNSで苦情の嵐となり「何万倍返し」になる恐怖ははかり知れません。そのリスクが高まることによって、クレーム対応の“現場の悩み”はますます深まっているようです。

一般にマスコミや世論は、企業や行政機関、病院、学校などの「組織」に対して「強者」というレッテルを貼り、ひとたび問題が生じれば一斉にバッシングに走る傾向が強いと言えます。「組織」は社会性や公共性を意識して、どうしても弱腰にならざるをえません。一方、「個人」は“モンスター”と呼べるほど非常識であっても、消費者、視聴者、患者、という「弱者」の立場なのです。こうした社会情勢のなかで、クレーム対応の担当者が置かれている状況はことのほか厳しいといえます。なぜなら、攻撃できるのはクレーマー

で、対応する側は専守防衛しかないからです。

特に最大手企業の寡占化に不満を持つ消費者は多く存在しています。ほとんどの企業は、横並び体質で、行政や消費者と当事者になることを嫌います。

ナンバーワン企業は、好まなくても「当事者にならざるを得ない」状況によるところは大きいと言えます。まず、リーディングカンパニーの動きを確認したうえで会社の方針を決めている企業は数えきれません。

であればこそ、トップカンパニーは「王道を歩む」必要があります。場当

たり的な事無かれ主義や「臭いものにふた」といった調子では、公益通報__制度や、不満を持つ社員からの情報漏えいで大企業といえどもクライシスに

陥る原因になるからです。

企業環境のハイリスク化

これまで述べてきたように、現代社会では、これまで、弱者と言われてきた方が社会的な力を持つようになりました。インターネットとSNSいう万民が自らの意見を気軽に発信できる機械(機会)を得ました。さらにスマホや携帯電話にはカメラと録音機能がついています。対応を間違えると瞬時に奈落の底に落ちてしまいます。クレーム対応が不安なのは、こうした「剛腕弱者、強面消費者」という超ハンディキャップ状態が原因なのです。

相手から暴力をふるわれる恐怖ではありません。失敗して落とし穴に陥り、社会的なバッシングを受けて炎上する恐怖感を持ちながら対応しているのです。

一般に、消費者と対応する側の企業よりも、弱者に世論の支持があります。特にネット環境はこうした傾向が強く、行政機関・監督官庁も弱者保護の原則が働き、圧力を受けるのは企業側になります。このように強烈な逆風の中での業務は、担当者一人で乗り切れるよ

うな安易なものではありません。

危機管理の初めの一歩

では、何から取り組めば良いのでしょうか。危機管理というと、テーマが大きすぎて「何をすればよいのか分からない」と思いがちですが、初めの一歩は“危機を意識すること”から始まります。

私は、危機管理について分かりやすく説明するために、まずは“さしすせそ”の意識を持つことから指導しています。

特に大切なのが、「最悪の状況をイメージし」備えることです。事実、日々様々な事件・事故が発生していますが、過去の事例と似ているものも多く、教訓化していれば防げたケースも多いのです。次に「組織で対応する」こと。従業員を孤立させない。組織的なシステムとして、当たり前のことを当たり前のこととして、確実に実行できる土壌をつくっておくことです。これを現場の危機管理の意識付け、チェックポイントとして有効活用してほしいと思います。事件・トラブルに発展する前に、「早めに対処していれば“犯罪の芽”を摘むことができたはず」と思われることが多いからです。

クレーム社会への対応策は?

今、クレーム対応する企業側はナーバスになり、過敏になってきていると言われています。「大きな問題になる前に過剰に守りに入り過ぎて、企業活動の活力を奪っている」と指摘する人もいます。では、果たして過剰対応と言えるのでしょうか?

リスクだらけの今こそ、平穏な日々(何も起こらない素晴らしさ)を再認識すべきです。幸福の絶対条件は、無差別攻撃に遭わないこと、そして、万一巻き込まれても被害を最小限に抑える“心構え=ダメージコントロール”をしておくことです。

繰り返しになりますが、企業のイメージ戦略の中で最も重要なCMがインターネットやSNSなどにより「何万倍返し」になる恐怖ははかり知れません。ひとたび何かが起きてしまい、これを放置すれば現場のモチベーションは下がり、“ブラック企業”と名指しされるかもしれません。混迷社会の中で負の連鎖が始まるのです。標的となる担当者は、いわばア

ウェーの環境にいるのです。クレームを受ける現場こそ武器もなく撃退もできない弱者と言わざるをえません。こうした状況は、今後ますます深刻化するでしょう。なぜなら、インターネット環境が身近になることで、「ネットモンスター」が増えたように、社会の

変化に乗じた新たな“タイプ”のモンスターが続々と誕生するからです。

それは、対応する企業にとっては、わずかなミスも許さない“受難の時代”の到来なのです。こうした“混迷の時代”においては大きな問題になる前の対応、火事になる前の“初期消火”こそが重要になるのです。

 

新たな著書の発売※2月6日発売開始予定

 

新しい年を迎え、新聞や週刊誌を読みながら、改めて社会的なバッシングの熾烈さと企業の危機管理の重要性を痛感した方が多いのではないでしょうか。

昨年後半から不安感が現実となって社会現象化しています。それは、「クレームと謝罪社会」の再来です。

みのもんたに始まり、大手都市銀行の反社会的勢力との取引、ホテルや百貨店の食品偽装、更にオリンピック招致で男をあげた猪瀬直樹・前東京都知事、農薬が混入した冷凍食品の公表の遅れ、相変わらずのウナギの産地偽装・・・次々に地雷を踏んで爆発炎上しています。

「ブラック企業」を煽るマスコミやインターネット情報の中で一般市民、消費者や患者としては何を信じてよいのか、社会の不安は深まるばかりです。

また、些細な動機による殺人事件も繰り返し発生しています。特に真面目で普通の人が、身近なトラブルや心の闇によって突然怒りを爆発させ、残忍で凶悪な事件を起こしているという現実が体感治安を悪化させている要因です。

最近、特に増加したクレームの対応について取り上げます。過激な暴力行為に変わる、新たな問題としてクレーム対応の現場を疲弊させている問題です。

それは、一般消費者がインターネットからさまざまな知識を吸収し勝手に解釈してしまい、『納得してくれない』いくら論理的に説得を心掛けても聞く耳を持たず、長時間無駄な労力をとられるケースです。

 

情報化の代名詞ともいえるインターネットの影響は甚大です。インターネットは、さまざまな情報を手軽に入手できる便利なツールですが、不愉快な情報もどんどん飛び込んできます。それが鬱憤をためる原因にもなり、消費者のこだわり方は、もはや常識や専門知識さえ受け入れてくれない状態になってしまっているのです。

さらに恐ろしいのは、クレーム対応を誤ると、苦情を訴えた本人からそっぽを向かれるだけでなく、一瞬にして不特定多数の人々にマイナス情報が拡大してしまうことです。インターネットという「便利で厄介なもの」により、企業や組織などのクレーム対応の現場でのリスクは大幅にアップしたのです。

「インターネットで流すぞ!」という脅し文句には相当の威圧感を感じるはずです。

「私は客(お金を払っているの)だ!」「そんな対応じゃ納得でない!」顧客満足を逆手にとって一歩も引かない構えを崩そうとはしません。

相手が理不尽だからといって「倍返し」とはいかないし、対応を誤ればインターネットで「何百万倍返し」されるか分かりません。

さらに相手にはあり余る時間があり、対応する側は常に業務に追われ時間がない「超ハンディキャップ戦」なのです。

そこで、反社会勢力や理不尽なモンスターの対応に焦点を絞ったセミナーを実施する企画をご提案します。

企業コンプライアンス体制の確立、内部統制強化への動きが加速し、反社会的勢力への対応策がこれまで以上に求められる中、企業の社外リスク対応の実践方法について、具体的な事例を交えながらご紹介するセミナーを開催致します。併せて、企業の対外リスクの情報収集と対応事例もご案内致します。

 

 2月初旬に、新書「理不尽な人に克つ方法」(小学館)も販売されることになりました。
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 ご検討の上、採用いただければ幸いです。

10月月報

10月

有名ホテルの食材偽装やメガバンクの反社会的勢力との取引など、マスコミによるブラック企業叩きはますますエスカレートしている。また、今回の偽装は氷山の一角との声も聞こえ、顧客への裏切り行為を糾弾する、クレームの増加に拍車がかかることは間違いない。

いま改めて、企業のリスクマネジメント能力がクローズアップされている。

 

そこで、今月はリスクマネジメント(危機管理)5カ条について徹底しておきたい。

 クレームへの適切な対応は、顧客満足度を高めるために不可欠であると同時に、企業における危機管理の要衝でもあります。

 そこで今回は、ぜひ「危機管理の5カ条」を「さしすせそ」で覚えておいてください。

「さしすせそ」と聞くと、調味料(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)や主婦の仕事(裁縫、躾け、炊事、洗濯、掃除)を思い浮かべる人が多いと思いますが、危機管理においても「日頃から意識しておくべき」重要な事項が5つの言葉に凝縮されています。

危機管理の5カ条

▲「さ」最悪のケースを念頭に置く(イメージしておく)

▲「し」視野を広くもつ。周囲との連携(気配り・目配り)

▲「す」隙を見せない。スピーディーな対応

▲「せ」責任の自覚。セキュリティーは先ず「心の施錠」

▲「そ」組織対応できるシステムづくり(教育・チェック・支援体制)

各項目について説明しよう。

●「さ」は、最悪の事態を想定して、それに備えることです。

これは危険予測につながる心構えであり、危機管理の基本と言えます。手慣れた日常業務のなかにも、リスクは潜んでいます。このことを自覚する「用心」を忘れないことが大切なのです。たとえば――。

 応接室で悪質クレーマーと交渉するとき、テーブルの上にガラス製の立派な灰皿が置いてあったとしたら、どうしますか? まず考えなくてはならないのが、「クレーマーが灰皿を投げてくるかもしれない」ということです。このようにイメージすることができれば、手早く灰皿を片づけ、落ち着いて対応することができます。

●「し」は、視野を広げ、周囲に注意を払うことです。危機管理というと、難しいことのように思うかもしれませんが、そうではありません。まず、挨拶からはじめればいいのです。

たとえば、来店者や訪問者に対して「こんにちは」と挨拶し、待たされてイライラしている患者を見かけたら、「お待たせしています」と一言、声をかければいいでしょう。

 こうした目配りや気配り、心配りは、一般企業では接客マナーとして一般化しています。事実、従業員教育がしっかりしている企業は顧客満足度も高くなっています。しかし、顧

客に対する目配りや気配り、心配りはクレームやトラブルに対する「護身術」でもあることを忘れてはなりません。

 たとえば、万引き犯など不審な客が入店してきたとき、「こんにちは」「いらっしゃいませ」と声をかけるだけで、相手に「自分が見られていること」を自覚させ、犯行を思いとどまらせる効果があるのです。

 企業でも同じことが言えます。訪問者への目配りや気配り、心配りは取引先の満足度を向上させると同時に、犯罪を未然に防ぐ防犯の役割もあるのです。

●「す」は、隙(すき)を見せない。スピーディーな対応(報告)を心がけることです。トラブルは最優先に対応しみて見ぬふりは厳禁です。したがって、悪いニュースほどできるかぎり迅速に報告する「バッドニュースファースト」が基本です。

ただし、スピーディーな対応とスピード解決を混同しないように注意してください。クレームやトラブルからはできるだけ早く解放されたいと思うのが人情ですが、解決を焦ってはいけません。

 とくにハードクレームや重大問題に発展しそうな案件では、腰を据えて長期戦に持ち込んだほうがいいケースも少なくありません。

●「せ」は、組織の一員としての責任を自覚することです。当たり前のように聞こえますが、クレームやトラブルが発生した現場では、しばしば「たらい回し」が起きます。仮に自分の担当でなくても、クレームを受けたら、その場で真摯に耳を傾けることが大切です。

会社に対する責任、上司や同僚・部下に対する責任。そして何よりも重要な「お客様に対しての責任」を自覚していれば、コンプライアンス違反も起こらないはずです。

●「そ」は、一人ひとりの職員を孤立させないことです。これは、有事の際の「手配り」、すなわち手配を指します。つまり、どのような事態に陥っても慌てないように、段取りや手順を決めておくことです。

 たとえば、クレームやトラブルに対して1人で対応しないシステムづくりも重要です。2人1組のペアを決めて、一緒に対応する「職場の相棒作り」も有効でしょう。

ある意味、「仕事のやりがい」やチームワークの強化は、困難な局面を乗り越えてこそ向上するといえるのです。

9月月報

9月

長時間労働やパワーハラスメントなど、労働環境が劣悪な「ブラック企業」が何かと話題になっている。テレビドラマのように“倍返し”出来ない社員の不満は募っているのだ。

しかし、私は「コンプライアンス」という言葉が使われるようになってから企業での不満は増えてきたように感じている。

もちろん法令の順守や犯罪行為については論じるまでもないが、「セクハラ・パワハラ」のなかには、「そこまで細かく指摘されたら、人間関係が息苦しくなる」と感じることも多い。

酒好きの論理かもしれないが“酒宴社会”が、人間関係の潤滑油であることは確かで、アフター5で学ぶことも多い。

このように「ブラック企業」といっても、所詮は個人の感じ方によるところが大きいのではなかろうか。要するに、「適当な人と神経質な人」は“感受性”が違う。

適当な人間だからであろうが、私が仕事で息苦しさを感じることが少ないのかもしれない。

さて、クレームの現場は社会の縮図である。これまで数多くのクレーマーに対峙してきたが、そのなかで感じるのはグレーゾーンの拡大に歩調を合わせるように、社会全体がどんよりした雲に覆われつつあることだ。

たとえば都会のラッシュアワーでは、サラリーマンが「ひたひたと押し寄せる不安」や「破裂寸前の不満」を抱えながら、諦め顔で先を急いでいる。私には、彼らがモンスター予備軍に見えてくる。

「モーレツ社員」は死語になって久しいが、それに代わって「格差社会」が聞き慣れた言葉になってしまった。そして、その背後からは「無縁社会」が顔をのぞかせる。

社会から孤立し、組織からは使い捨てのように扱われる人々を「ビニール傘」にたとえることもできるだろう。コンビニや100円ショップでは、安価なビニール傘が売られている。天候不順の季節には重宝するが、大切に扱われることは少ない。拾得物を管理する警察によれば、傘の落とし物を引き取りにくる人は1%にも満たないという。

出張などで飛行機に乗るとき、空港までは雨除けのためにビニール傘を差していても、機内に持ち込むのは面倒なので、わざと空港ロビーに置いていかれる。

しかし、そんなときは妙に心がざらつくのではなかろうか。躊躇なく使い捨てにされるビニール傘と、ぼろぼろになって置き去りにされる自分がオーバーラップするからだろう。

私は、警察として治安維持に取り組み、民間人としてハードクレームに悪戦苦闘するなかで、否応なく自分自身の生き方や社会のあり方にも目を向けることになった。そこには、トラブルやクレームを乗り越えるためのヒントも隠されているように思う。

 

誰もが自分が可愛い。「ビニール傘のように、気安く使ってください」こんなふうにうそぶくことはできない。

では、ビニール傘のような扱いを受けないためには、どうすればいいのか?

それは、「骨」のしっかりした人間になることである。そうすれば、たとえ「向かい風」や「突風」に見舞われても簡単に壊れることはない。そしてタフな代物であることがわかれば、周囲からも大切に扱われるはずである。

しかし、「言うは易く行うは難し」の如く、人は安きに流れやすい。はじめは理想や信念をもっていても、いつの間にか変節してしまうことがある。

現状に100%満足している人は、まずいない。多かれ少なかれ、社会や組織、上司や部下に不満を抱いているはずだ。それが怒りや嫉妬、あるいは不安という負の感情と結びつくと、人間性をゆがめてしまう。そして、あらゆることに対して批判的になり、人間関係も狭くするだろう。この「負の連鎖」に陥ると、やがて心のタガが外れ、常軌を逸した行動に出てしまう。

不満をためて、会社や上司のせいにして逆切れしたり、内部告発する人もいる。しかし、その多くは結果としてうまくいかない。いくら粋がって正義の味方を気取って見せても、骨が折れたビニール傘にすぎないのである。

ものの本によれば、人は「人材」「人財」「人在」「人罪」に分類できるという。人材を磨いていけば人財になるが、失敗を恐れてなにも行動しなければ、ただそこにいるだけの人在になり、悪事に手を染めれば人罪になる。

しかし、この境域は思いのほか狭いのかもしれない。善良な市民がモンスターに変身するのと同じように、簡単に人生の道を大きく踏み外してしまうことがあるのではなかろうか。

 

8月月報

●CSとRM

「こちらに非はないと思っていても、100%の確証があるわけではない。どこまでお客様の目線での対応をすればいいのか?」

もちろん、クレームはCS(顧客満足)対応が基本です。ご指摘・ご不満・ご要望が、企業やお店にとって貴重な情報源になることも事実であり、サービス向上や業務運営に役立てられるケースは枚挙にいとまがありません。

顧客の心理に目を向け、クレームの裏にある不安やコンプレックス、こだわりなどを汲み取る。これが、クレーム対応で最初に求められる目線。お客様の気持ちに親身なって「気配り・目配り」することが『CS』の基本です。

 

一方で、何が起こるか分からない不安な時代に、しっかり企業・店舗を運営していくためには『RM』(リスクマネージメント危機管理)の考え方も不可欠なのです。

金品や特別扱いを要求する悪質クレーマーに屈していては、常習化し業務運営に支障をきたすことになります。

クライシスに陥らないためにも、CSからRMへの切り替えを事前に準備し、クレーム対応中も意識しておく必要があるのです。

 

●情報過多社会

情報を得ようとして(が多すぎて)混乱している現実にも気付いてほしい。相手に気を配り過ぎると、心も目も手も「パソコンやスピーディーな社会への対応」で、使い過ぎて疲れきっている。

具体的に言うと、RMの領域で「気・目・心」を配っていては、相手のペースにはまってしまいます。モードをチェンジしたら焦点を絞り、クレームの内容ではなく、クレーマーの「言葉」と「態度」に注目するのです。

 

●逆手に取る技術

経験したことのない猛暑が続いた今年の夏、四国の四万十市では観測史上最高の41度を超えた。

こんなニュースを聞きながら「立秋とは名ばかりで実態と合わない。季語も考え直さなくてはいけない時代だな・」「雨がほしいな・・・ひと雨でも・・」と思いながら甲子園の球児たちを観ていた。するといきなり速報が流れ、アナウンサーが叫んでいる。「これまで経験したことのない豪雨です!!」

猛暑も豪雨・爆弾低気圧の激しさも、これまでの経験が通用しない。まさに先の見えない不安な時代の到来である。押しつぶされ心が折れそうになるが自然環境には抗いようもないが、ものは考えよう。

四万十市は暑さを逆手にとってPRし、地元の直売所は最高の売り上げを記録したという。
「ようこそ日本一のあついまちへ」。小学生が夏休みの課題で作った手作りの看板がネットに流れニュースでも紹介される。費用はかけなくてもネットを使えば、良いニュースも悪いニュースも瞬く間に拡散される。

情報化時代は何事も“逆手に取るぐらいのしたたかさ”が必要なのかもしれない。

情報過多に流されず、悲観や心配し過ぎてもはじまらない。地に足をつけてしっかり踏ん張り生きて行く。

 

●タガの外れた輩には、常識人はたかが知れている

クレーム対応において最善の回答を導き出すという姿勢は、一見すると合理的に思えますが、悪質なクレームの場合は必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、クレーマーの悪意や「心の闇」を完全に理解しようというのは、どだい無理な話だからです。そもそも、クレームに対して百点満点の解決を目指すことは、過度なプレッシャーをもたらし、それが判断ミスにつながることになるのです。

 頭脳明晰なエリートほど、この陥穽にはまりやすい。それは日頃、つねに完璧な「正解」を求めているからですが、クレーム対応では数式どおりにはいかないのが現実です。

明らかに悪質クレーマーだと見極めたら、相手のペースに巻き込まれないように余計な情報をシャットアウトすること、自ら「視界」を狭めて(耳を閉じ)しまうのである。

たとえば、クレーマーから執拗にいやがらせの電話がかかってくる。

「どうしてくれるんだ!」受話器を耳に当てていると、鼓膜が破れそうになる。

そんなときは、相手の言うことを一言一句漏らさず聴こうなどと思ってはいけない。反対に、受話器を耳から遠ざけてしまえばいい。怒鳴り声を“逆手にとれば”それまで身がすくむほど恐ろしかった罵声が、ちょっと耳障りな雑音ぐらいに感じるはずだ。