10月月報

10月

有名ホテルの食材偽装やメガバンクの反社会的勢力との取引など、マスコミによるブラック企業叩きはますますエスカレートしている。また、今回の偽装は氷山の一角との声も聞こえ、顧客への裏切り行為を糾弾する、クレームの増加に拍車がかかることは間違いない。

いま改めて、企業のリスクマネジメント能力がクローズアップされている。

 

そこで、今月はリスクマネジメント(危機管理)5カ条について徹底しておきたい。

 クレームへの適切な対応は、顧客満足度を高めるために不可欠であると同時に、企業における危機管理の要衝でもあります。

 そこで今回は、ぜひ「危機管理の5カ条」を「さしすせそ」で覚えておいてください。

「さしすせそ」と聞くと、調味料(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)や主婦の仕事(裁縫、躾け、炊事、洗濯、掃除)を思い浮かべる人が多いと思いますが、危機管理においても「日頃から意識しておくべき」重要な事項が5つの言葉に凝縮されています。

危機管理の5カ条

▲「さ」最悪のケースを念頭に置く(イメージしておく)

▲「し」視野を広くもつ。周囲との連携(気配り・目配り)

▲「す」隙を見せない。スピーディーな対応

▲「せ」責任の自覚。セキュリティーは先ず「心の施錠」

▲「そ」組織対応できるシステムづくり(教育・チェック・支援体制)

各項目について説明しよう。

●「さ」は、最悪の事態を想定して、それに備えることです。

これは危険予測につながる心構えであり、危機管理の基本と言えます。手慣れた日常業務のなかにも、リスクは潜んでいます。このことを自覚する「用心」を忘れないことが大切なのです。たとえば――。

 応接室で悪質クレーマーと交渉するとき、テーブルの上にガラス製の立派な灰皿が置いてあったとしたら、どうしますか? まず考えなくてはならないのが、「クレーマーが灰皿を投げてくるかもしれない」ということです。このようにイメージすることができれば、手早く灰皿を片づけ、落ち着いて対応することができます。

●「し」は、視野を広げ、周囲に注意を払うことです。危機管理というと、難しいことのように思うかもしれませんが、そうではありません。まず、挨拶からはじめればいいのです。

たとえば、来店者や訪問者に対して「こんにちは」と挨拶し、待たされてイライラしている患者を見かけたら、「お待たせしています」と一言、声をかければいいでしょう。

 こうした目配りや気配り、心配りは、一般企業では接客マナーとして一般化しています。事実、従業員教育がしっかりしている企業は顧客満足度も高くなっています。しかし、顧

客に対する目配りや気配り、心配りはクレームやトラブルに対する「護身術」でもあることを忘れてはなりません。

 たとえば、万引き犯など不審な客が入店してきたとき、「こんにちは」「いらっしゃいませ」と声をかけるだけで、相手に「自分が見られていること」を自覚させ、犯行を思いとどまらせる効果があるのです。

 企業でも同じことが言えます。訪問者への目配りや気配り、心配りは取引先の満足度を向上させると同時に、犯罪を未然に防ぐ防犯の役割もあるのです。

●「す」は、隙(すき)を見せない。スピーディーな対応(報告)を心がけることです。トラブルは最優先に対応しみて見ぬふりは厳禁です。したがって、悪いニュースほどできるかぎり迅速に報告する「バッドニュースファースト」が基本です。

ただし、スピーディーな対応とスピード解決を混同しないように注意してください。クレームやトラブルからはできるだけ早く解放されたいと思うのが人情ですが、解決を焦ってはいけません。

 とくにハードクレームや重大問題に発展しそうな案件では、腰を据えて長期戦に持ち込んだほうがいいケースも少なくありません。

●「せ」は、組織の一員としての責任を自覚することです。当たり前のように聞こえますが、クレームやトラブルが発生した現場では、しばしば「たらい回し」が起きます。仮に自分の担当でなくても、クレームを受けたら、その場で真摯に耳を傾けることが大切です。

会社に対する責任、上司や同僚・部下に対する責任。そして何よりも重要な「お客様に対しての責任」を自覚していれば、コンプライアンス違反も起こらないはずです。

●「そ」は、一人ひとりの職員を孤立させないことです。これは、有事の際の「手配り」、すなわち手配を指します。つまり、どのような事態に陥っても慌てないように、段取りや手順を決めておくことです。

 たとえば、クレームやトラブルに対して1人で対応しないシステムづくりも重要です。2人1組のペアを決めて、一緒に対応する「職場の相棒作り」も有効でしょう。

ある意味、「仕事のやりがい」やチームワークの強化は、困難な局面を乗り越えてこそ向上するといえるのです。